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京都地方裁判所 昭和36年(ワ)894号 判決

原告(参加事件被告) 小川陽

右法定代理人親権者 父 小川慶蔵

母 小川須磨子

右訴訟代理人弁護士 坪野米男

同 山口貞夫

被告(参加事件被告) 小川恵美子相続財産管理人 山口友吉

参加人 高橋弥太郎

〈外三名〉

右参加人四名 訴訟代理人弁護士 石川惇三

主文

被告は、原告に対し、

(一)  別紙目録第一記載の不動産(本件不動産)につき、所有権移転登記手続をなし、

(二)  別紙目録第二記載の電話加入権(本件電話加入権)につき、譲渡承認請求手続をなし、

(三)  別紙目録第三および第四記載の動産(本件動産)を引渡せ。

参加人等の請求を棄却する。

訴訟費用中、原告と被告との間に生じた分は、被告、参加人等と原告・被告との間に生じた分は、参加人等の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、請求原因および答弁として、

一、(一)本件不動産の所有権および本件電話加入権は、戸主であった小川弘一に属した。小川弘一は、昭和二二年三月二一日死亡した。小川弘一には法定又は指定の家督相続人なく、相続人の選定がなされることなく、昭和二三年一月一日改正民法の施行となった。

(二) そこで、小川弘一の妹小川恵美子が、小川弘一の遺産相続をなし(新法附則第二五条第二項)、本件不動産の所有権および本件電話加入権を取得した。

(三) 本件動産の所有権も小川恵美子に属した。

(四) 小川恵美子は、昭和三二年八月中旬頃、原告の法定代理人父小川慶蔵(恵美子の父小川仁三郎の弟)母小川須磨子との間に、小川恵美子死亡の場合その全財産を原告に贈与する旨約した。

(五) 小川恵美子は、昭和三三年一二月八日、ガス地中漏洩事故により死亡し、被告は、昭和三四年一月二三日、京都家庭裁判所より小川恵美子の相続財産管理人に選任された(民法第九五二条)。

(六) 参加人等主張の(三)、(四)の事実は認める。

(七) よって、原告は主文記載の判決を求める。」

と述べ、

被告は、「原告および参加人等の請求を棄却する。」との判決を求め、答弁として、「原告主張の(一)、(二)、(五)の事実、参加人主張の(三)、(四)の事実は認めるが、その余の事実は争う。」

と述べ、

参加人等は、「本件不動産の所有権および本件電話加入権が参加人等に属することを確認する。」との判決を求め、その請求原因として、

「(一) 原告主張の(一)および(五)の事実は認める。

(二) 原告主張の(一)の事実にもとづいて小川弘一の継母であった訴外小川ミツ(小川弘一の父小川仁三郎と昭和八年一月三〇日婚姻)が、小川弘一の遺産を相続した(新法附則第二五条、同附則第四条)。

(三) 参加人高橋弥太郎は、小川ミツの兄である。その余の参加人等は、小川ミツの弟である亡高橋孝三郎の子である。

(四) 小川ミツは、昭和三三年一二月八日、ガス地中漏洩事故により死亡し、参加人等が、小川ミツの遺産を共同相続した。

(五) よって、参加人等は、本件不動産の所有権および本件電話加入権が参加人等に属することの確認を求める。」

と述べ、

証拠≪省略≫

理由

原告主張の(一)、(五)の事実は当事者間に争がない。

昭和二二年法律第二二二号民法の一部を改正する法律(新法)附則第二五条によれば、本件のように、日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(応急措置法)施行前に家督相続が開始し、新法施行後に旧法によれば家督相続人を選定しなければならない場合には、その相続に関しては、新法が適用される。

≪証拠省略≫によれば、新法施行当時、小川弘一には、配偶者、直系卑属、直系尊属なく、唯一人の妹小川恵美子があったことが認められる。

したがって、小川恵美子が小川弘一の遺産相続をしたものと認められる。

参加人等は、「小川ミツは小川弘一の継母(直系尊属)として、小川恵美子(妹)に優先して、小川弘一を遺産相続した。」と主張する。

しかし、旧法第七二八条の規定する継親子関係および嫡母庶子関係は、家を同じくする場合にのみ発生する親子関係であるから、応急措置法第三条により、旧法第七二八条は、家に関する規定として、適用を排除せられ、継親子関係は、応急措置法施行(昭和二二年五月三日)と同時に消滅したものと解釈すべきである。(新法附則第一六条、第二六条第二項は、この解釈を前提として規定している。中川善之助・相続法(法律学全集)八三頁は、継親子関係は、応急措置法施行によって消滅せず、新法施行(昭和二三年一月一日)によって消滅する、旨説いているが、採用し難い。)

したがって、参加人等の主張は採用できない。

原告援用の≪証拠省略≫によれば、原告主張の(三)、(四)の事実を認めうる。

よって、原告の本訴請求は、正当として、これを認容し、参加人等の請求は、失当として、これを棄却し、民事訴訟法第八九条第九三条第九四条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 小西勝)

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